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東北地方や北海道を中心に飼育される短角牛(日本短角種)は、生産量が和牛全体のわずか1%という希少価値の高い種類。生産量が限られた和牛を飼育する生産者の想いと、そんな希少な和牛が食べられるレストラン、自宅でのおいしい食べ方を、実食レポートと一緒にお伝えします!
短角牛とは?
和牛と国産牛の違い
スーパーなどで見かける牛肉は、和牛・国産牛・輸入牛と、3種類に分かれます。和牛は、黒毛和牛や日本短角種を含めた4種類で、日本の在来種を元に交配・改良された牛の「品種」を指します。一方の国産牛とは、「日本国内で飼育された牛」のこと。つまり、海外生まれのどのような品種でも、日本で飼育された期間が長ければ「国産牛」として表記できるのです。国産牛は、そのほとんどが乳用種のホルスタインですが、彼らは「和牛」とは表示されません。
ちなみに輸入牛は「生まれも育ちも加工も日本国外」で、日本に輸入されてきた牛肉。たとえパッケージに「国産牛」と書かれていても、「全てが国産」ということではないのですね。
大自然の中で育てられる短角牛
短角牛は、伝統的な「夏山冬里方式」で育てるという特徴があります。春に親子で放牧される子牛は、野山で牧草を食べ、適度に運動し、母乳をたっぷりと飲んで成長。体重が2.5倍ほど増えた子牛は、冬になると肥育のため里の牛舎へと戻り、大切に育てられます。繁殖も自然交配。大自然の中、のびのびと健康的に育つからこそ、引き締まった肉質の、旨みが凝縮した最高の和牛が育つのです。
短角牛の価格は?
和牛の格付けで「A5」というランクを耳にしたことはありませんか。牛肉の格付けは、A〜Cランクで判断される「歩留(ぶどまり)等級」と、5〜1ランク(5が最高)で判断される「肉質等級」とを組み合わせて決定します。「同じ体重の牛から取れる肉の量を級で表したもの」が歩留等級で、サシが多く光沢のある明るい赤身肉であること、かつ締まりとキメが良く脂肪の色が白いものほど高ランクで評価されます。これは、放牧されて育つ短角牛にとって分が悪い指標。手間ひまかけて育てた和牛であっても、格付けが低く、価格としては下がってしまうのです。
短角牛を育てる生産者の想い
牛飼い・柿木さんの紹介
岩手県久慈市で短角牛の生産に携わる柿木さんは、牛の仲買人である「馬喰」だったお父さんの背中を見て育ちました。1991年に牛肉の輸入自由化が開始され、赤身肉が持ち味の短角牛は輸入牛肉と特徴がかぶるため、制度が始まれば短角牛を育てる生産者が激減する恐れが。国内の生産者がいなくなることに危機感を持った柿木さんは逆転の発想で、「生産者が減れば短角牛の市場価値が高まる」と考え、親子2代で短角牛の飼育に取り組んできました。生産者と消費者をつなぐ架け橋として短角牛の価値、味、想いを届けるために活動されています。
飼料へのこだわりと命の価値
輸入飼料を使う畜産農家が多いなか、柿木さんは牛たちを育てる飼料を国産にこだわり、自家栽培も行います。春夏の放牧中に子牛が食べる牧草も無農薬で、冬越えのため牛舎へ戻ってからのエサも、自家製トウモロコシサイレージや国産の飼料など。柿木さんが国産飼料にこだわるのは、短角牛の健康的な赤身肉の特徴をより引き出すため。自然の中、自由で健康にストレスなく育ってもらうのが、牛飼いとしての柿木さんの想いなのです。「死んでから価値がでるのが家畜。だから、生きている間は幸せでいてほしい。」という命に対する感謝が、飼料にも現れています。
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